それぞれ2

 今日は女装をして9時におかんの店で合流する。それで仕事を7時半で上がった。かえでの公休日だ。かえでは休みには昼までゆっくり寝て買い物に出かけ服を買い込んでくる。かえでにはマンションによってジーパンを取ってきてもらう。昼の間は父は外でビラを配っている。
「ひろし君来ないね?」
「女同士の時は恥ずかしがって避けるのよ」
 おかんにそう返事して時計を見る。30分過ぎている。
「ひろし君姉さんの友達と?」
「付き合っているようね?」
 かえでが髪を乱して入ってくる。
「遅かったね?」
「起きるの遅くて買い物をしたらマンションによる時間遅くなって」
と言ったきり口をつむんでいる。言いたくないことがある時の癖だ。
「怒らない?」
「うん」
「お父さんと部屋であった。そしたらお父さん一人でオナニーにしていた。それで私入れてあげた」
「入れた?」
 言葉が出ない。
「怒った?私お父さんと話できて嬉しかった。20年ぶりだって言ってたよ」
「ありがとうと言うべきだな?」
 このシーンがかえでの漫画にあった。





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それぞれ1

「ちょっと来てくれ?」
 朝出がけに支店長から呼ばれて2階に上げる。その部屋に内部責任者の次長が座っている。テーブルの上に通帳の記帳履歴が並んでいる。串カツやの会長の通帳と飛田の小料理屋の女将の通帳が並べたれている。
「とくに5年前からここからお金が1千万~2千万出て同額1か月後にこちらから戻されている。係わりがあるのか?」
「全く別人の通帳です」
「何のお金だ?」
「ただ集金をしているだけで」
 私は嘘をついた。平さんはもう10日後に退職する。それだけ言うと両替に出る。自転車をこいでいると横に原付が着く。
「次長が通帳を調べていたが?」
「それを聞かれました」
「話した?」
「いえ」
「ならいい」
 それだけで離れていく。ふと自転車を止める。父に似ている?阿倍野の交差点でビラを配っている。こちらに落ちているビラを見るとピンク広告だ。もう私のマンションに泊まって2か月になる。家賃はこちらが払っている。だから相当な金欠だ。かえでが気にしておかんの店の支払いはしてくれる。
「親父コーヒーを飲もう」
 声をかけて喫茶店に入る。
「母から送金はないのだろう?」
「・・・」
「今の仕事じゃ食べれないだろう?仕事を頼んでみる」
 そう言って1万札を置いてコーヒー代を払って出る。







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すみれ11

 かえでは病気のことは話さない。でも顔色は戻った。今日は二人でかえでの出版記念に出かける。もちろん私はすみれとして一緒に行く。環状線天王寺からホテルのある京橋で降りる。私もそうだがかえでもネットではずいぶんファンがいるようだ。今回の作品はすみれとかえでの物語だ。
 会場には若い人とくに女性が50人ほどいる。かえでが入口で本にサインをする。その後かえでが中央の席で物語の話をして質問に答えている。バイキング形式で飲み物も出ている。同業の物書きが挨拶をする。かえでが私を紹介する。
「この作品のモデルなんです」
「わー!綺麗な人」
 物語は私も読んだが私は男でなくレズの関係になっている。
「本当に抱き合うの?」
「はい」
 質問を受けて私も答える。
「あなたも漫画描くの?」
 これは同業の漫画家の女性だ。
「いえ、私は小説を書きます」
「かえでさんはこれで1千万は稼がれると思いますよ」
「1千万?」
 これは横に来て名刺を出した出版社の社員だ。そんなに有名だったのか。
「彼女のエロさは女のファンが多いのですよ」
 帰りがけかえでからラブホテルの誘った。かえでは自分の作品で濡れ切っていたのだ。
「今日はアナルに入れてね?」
 この日のためにかえでは指でアナルを鍛えていたのだ。








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すみれ10

 朝かえでが蹲っている。
「どうした?」
「見ないで!」
 顔が真っ白だ。パジャマのズボンが鮮血に染まっている。
「救急車呼ぼうか?」
「時々あるから心配しないで」
「病院に行けよ」
と言って追い出されるように銀行に出る。
 3時にかえでからメールが入って病院に行ったとあった。店は休むとのこと。今日は4時に飛田のあの店で集金があるというので出かける。2階に上がると広間に8人ほど男女の年配人たちが座っている。テーブルにはビールやお酒が並んでいる。私は平さんに紹介されて座る。
 どうもここにいる人は顔見せの主人たちで女の子の金をまとめて頼母子に来ているようだ。集まった金は2千万ほどある。私が袋を確認して入金の記帳をする。平さんは手を上げた人に用意していた札束の入った袋を渡す。
 私は自転車なのでお金は預からず一度銀行に戻り両替に走る。7時にいつも通り戻ると平さんはもう帰ってしまっている。
『今おかんお店にいる』
 かえでからだ。何を考えてるんだ。慌てて銀行を出た。
 おかんの店の暖簾を潜ると、定席にかえでがビールを飲んでおかんの不良の親父と話している。おかんは私を見ると親父を引き離す。
「ビールは辞めろよ」
「気付け薬よ」
「ダメだよ」
「生きている間は好きなようにさせて」





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すみれ9

 徐々に引継ぎが始まっている。だがまだ近場が中心で自転車で走っている。もう半月が経つのに父からは就職が決まったという連絡はない。それで心配になって10時にマンションに行くと伝えた。
「お金いけてるの?」
「預金を送ってもらったから」
 これは嘘だ。
「それにチラシを配る仕事を繋ぎでしている」
 それでも給料から3万を出して置いて帰った。今日は7時に平さんから飲みに誘われている。呼ばれた先は飛田の表通りの裏の路地にある小料理屋だ。
「若い人ね?」
 30歳くらいの女将だ。部屋はカウンターだけで10席程度だ。
「ここは働いている女や常連が来る。この裏通りから店にも入れる」
 確かに化粧した顔見せに並んでいるらしい女の子が軽食にビールを飲んでいる。
「この子は沖縄から来た私の親戚の子やがクォーターや」
「私の旦那様よ」
 親子ほど違う。
「この店は?」
「私が10年前に買った。20歳の時に訪ねてきて顔見せで働くと言うのでここでアルバイトで雇った。それが男と女の関係になった」
「奥さんと子供は?」
「42歳の時に別れたわ。出世しないとな。こういう生き方もある幸せだわ。みんな隠れた自分を持っているんや」
 3歳くらいの女の子が平さんの手を引っ張っている。すみれである私もそうだ。
 9時半におかんの店に行くともうかえでがおかんと楽しそうに笑って話している。






 



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プロフィール

yumebito86869

Author:yumebito86869
もう記憶の中で小さくなってしまているが、
小さい頃病院で隔離されていた時期があった。
その時隣部屋にかえでと言う毛糸の帽子を被った少女がいた。
童貞を失ったのもかえでだ。
何もかもう失った時、私はすみれとして彼女と再会した。
また短い時間だったが私の中で一生光り輝いている。

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