秘密基地3

 看護婦に頼んで車椅子を出してもらった。私は車椅子の押し手だ。今日は水色の空に筋雲が見える。
「あの看護婦さん覚えている?」
「いや?」
「秘密基地で見た看護婦さんよ。乳首が大きかった。きっと子供がいるのよ」
「よく知ってるな?」
「女性週刊誌を見ているもん」
「まだ歩けない?」
「これ見てよ」
とパジャマのズボンを腿まで上げる。何とほっそりし過ぎた脚だろう。
「すっかり肉が落ちたわ。ひろし君の絵では私は眠ったままよ。早く起こしてね?」
「今日起きるところを描くよ」
「絵はまだまだだけど文章は好きよ」
 こうして話しているときは他の人は気にならない。今日も常連の子供たちに年寄りがいる。
「あの橙の電車が停まる駅の名前知っている?」
「いや、聞いてみようか?」
「そんなこといいよ。私はもう名前を付けている。天国行きよ。だからひろし君の橙の電車のようにぐるりと回らない。そこから空に飛ぶの。いつか漫画で夜行列車が空を飛ぶのを見た」
 空を飛ぶ発想は私にはなかった。かえでは足をバタバタしている。
「痛い?」
「筋肉を戻したいの。そうしないと秘密基地には行けない」






スポンサーサイト

テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

コメント

非公開コメント

ページトップへ
プロフィール

yumebito86869

Author:yumebito86869
もう記憶の中で小さくなってしまているが、
小さい頃病院で隔離されていた時期があった。
その時隣部屋にかえでと言う毛糸の帽子を被った少女がいた。
童貞を失ったのもかえでだ。
何もかもう失った時、私はすみれとして彼女と再会した。
また短い時間だったが私の中で一生光り輝いている。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR