銀河鉄道9

 窓の外から桜の膨らんだ蕾が見える。かえでは疲れたのかまだ眠っている。窓を閉めるとパソコンを開ける。この中にかえでの遺書が入っている。これを私は見てもよいと言われている。だからついつい見てしまう。これはかえでが私が見ることを予想して書いている。私の覚悟を導いているのだ。
 昨日書いたのだろう。新しい文章が加えられている。静江に会社登記の社長の変更をしたと書いてある。とうとう最終の引継ぎを始めたようだ。かえでは自分の命が切れる音が聞こえるのだろうか。母には伝えず父に3千万を渡すようにとも書いている。静江がすでに私の朝食を用意している。
「部屋に入って来い」
 常務に明日休む届けを出している。常務は今日銀行から特別表彰を受ける。私も結果的に初めて代理を抜いて1位の表彰を受けた。私が部屋に入ると常務自ら鍵をかけた。
「これはオフレコだが残念ながら最後の頑張りだったが、力が及ばなかった。合併が決まってしまったよ」
 吸収合併だがその次も予定されていると聞いていた。
「明日には新聞にも発表される。9月がめどだ。今の双方の頭取は辞任して相手の専務が頭取となり私が専務になる。だがその後1年後には都銀に吸収される予定でほとんど都銀には残らない。君が付いてくるなら今回はポジションを用意できるが?」
「しばらく時間をください」
 常務室を出て原付で走り回る。いつの間にかかえでの病院の前に来ていた。明日の桜が咲いているのか見に来たのだ。まだ3分咲だがかえでに桜を見せれる。銀行を辞めてかえでと一緒に小説を書こうか。これは前々から考えていた。小説を書くならずっとすみれでいれる。
 帰り道に平さんの店を覗く。たまたま父が店の前を掃いていて母がお客を送り出している。
「いやあ」
 原付を止めて手を上げる。始めて夫婦で並んでいる姿を見た。親も変わった夫婦だが私はそれ以上だ。












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テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

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yumebito86869

Author:yumebito86869
もう記憶の中で小さくなってしまているが、
小さい頃病院で隔離されていた時期があった。
その時隣部屋にかえでと言う毛糸の帽子を被った少女がいた。
童貞を失ったのもかえでだ。
何もかもう失った時、私はすみれとして彼女と再会した。
また短い時間だったが私の中で一生光り輝いている。

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