明日の夢6

 あの日の映像と写真が完成して送られてきた。かえではすでにブログですみれと撮影をしたと報告している。そのさわりの部分を今朝アップした。そこでモニュメントを発売すると宣言した。
「発禁になるのじゃ?」
「もちろん映像は修正をするわ。恥かしい?」
「いや」
「すでに彼らに同時に作ってもらっているのよ。私が死んでも生き続けるよ。今日は遅くなる?」
「夜に父を交えて母と話をする」
 これは困った顔で父が伝えてきたのだ。妹に子供ができたので金を作れと言うことだ。
「会社から金を出してもいいのよ」
「いや、妹に出すならどぶに捨てる」
 8時に銀行を出てマンションに行く。部屋の模様替えをしたのか依然の雰囲気がなくなっている。母の横に座っている父は別人のようだ。こういう結婚もあるのだ。
「いくら出す?」
 頭から出す話だ。
「ひろしも生活は厳しいのだよ。ここもひろしのマンションなんだ」
「だったらどこに住んでいるの?」
「友達のところに居候している」
「店は倒産するし子供ができるし大変なのよ。兄として応援する気はないの?」
 もう我慢の限界に来ている。急に立ち上がると、
「妹の応援はしない」
と部屋を飛び出した。
 戻るとかえでがビールを用意していて黙って勧めてくれる。







スポンサーサイト

テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢5

 私はかえでのアップされていない未公開作品を根気よくブログに載せている。かえでの4作目が発刊された。これは病院を退院して飛田の桔梗に出始めた日からの物語の漫画だ。この作品はかえでが元の作品に手を入れて書き変えた。最後にかえでが自殺することになるのだが、すみれとの再会に書き変えられた。
 今日は久しぶりにともこも入れておかんの店で飲むことになった。ともこが来てかえではしっかりと食べるようになった。それで少し元気になったように思う。
「こちらは?」
とおかんが久ぶりに顔を出したかえでに聞く。
「ひろし君の双子のお姉さん」
「あのすみれさん?そう言えば似ているわね」
「かえでは好き放題だからな」
 私は笑って二人にビールを注ぐ。
「私ね、桔梗に来年から出ようかと思っているのどう思う?」
「住まいのことなら心配しないでね?」
 かえではすでに相談を受けているらしくそれ以上は言わない。今は3人が川の字に寝ている。気を使っているのか夜は12時を過ぎて戻ってくることもある。
「もちろん言えた立場じゃないけどな」
「それより応援しないとね?」
「応援?」
「姉さんを抱くの怖い?」
「怖くない」
「なら部屋を出て行く日までに私が段取りする」












テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢4

 あの日からかえでが寝込んだ。朝には必ずともこが食事の用意に来てくれる。疲れが出たようだ。だが私もかえでも覚悟の上だ。だが今日はともこが大きなトランクを持って現れた。
「姉さんどうした?」
「お母さんが来られたのです」
「中国から?」
「いえ、お父さんのお母さんが。どうも女を連れ込んだように思われて」
「困った人だ」
「しばらく姉さんを泊めてあげて?」
 かえでに言われて奇妙な3人暮らしが始まった。銀行に出て昼には父が働いている店に顔を出す。
「どうしたのですか?」
 姉と炊事場にいる父に声をかけた。
「お好み屋は倒産したしたそうだ。妹はそれでお母さんを追い出した」
「財産は?」
「すべて投げ出して旅費も身の回りのものを売って作ったようだ。相変わらず妹の悪口は言わず兄が保証人にならなかったことを恨んでいる」
「どうするんですか?」
「ともこが心配で?」
「しばらくは私のところに泊めます。それよりお父さんは?」
「女房だからな」








テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢3

 スタジオに入るとブログ仲間の男女が3人ビデオとカメラを据えている。すみれとかえでは持って着た衣装に着替える。静江がすみれをともこがかえでの服を着せる。
「私のお姉さんみたいよ」
と静江が言う。彼女とはまだ体を交えていない。これはかえでが日を決めると言っている。これはかえでがデザインして作った服だ。まだ一度も袖を通していない。いろいろポーズを取って撮影が始まる。12時に一度弁当を取ってともこが帰る。食事の間もビデオを回している。
 1時からは持ってきた黒のTバック姿に着替える。
「かえでそれではお尻の穴が丸見えよ」
「すみれのも短くしている」
 静江の顔を見ると真っ赤になっている。それでもカメラマンは屈んだ二人を後ろから取っている。
「すみれのがTバックからはみ出している」
 急にかえでがキッスをしてくる。それから唇が下に降りてきてすみれもものを含んでいる。静江のしいさな悲鳴が上がるが、カメラは冷静にシャッターが押されていく。
「綺麗だよ」
「嬉しい!」
 もう二人には周りが見えていない。素っ裸になって反り立たものをかえでの中に入れた。二人のすべてを残すと言うかえでの言葉でこうなることを予想していた。カメラマンにも伝えていた。もちろん静江には話していない。
「静江よく見て置いて。私はあなたの中で生きていくから」
「頑張ってすべてを焼き付けておきます」
 だが3時半にかえでが眩暈を起こして撮影を中止した。





テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢2

 かえでが死ぬ。この言葉が私の頭の中に充満して爆発しそうだ。今日は朝4時に目が覚めてしまって、かえでの寝顔を見ながらかえでとすみれのブログを見ている。かえでがあの病院時代の交換絵物語をリメイクしている。彼女は交換絵物語の画帳を失ったと言っていたが、最近買ったデジカメであの時の絵を写しだして小さな言葉を添えている。
「見つけちゃったね?」
 私の背中にかえでの顔があった。
「完成できなかったら引き継いでね」
「いや絶対完成させろ」
「あの頃は絶望で真っ暗だった。このまま家族からも見放され病院で死んでいくのかと思っていた。それが私にも王子さまが現れてくれた」
「いや同じだよ。妹を見てきて女性への妙な嫌悪感があった。これからは一人で生きる道を考え始めていた」
「また会えるとはなんと幸せなんだろうと。もう思い残すことはないよ」
 私も心の中ではよく分かったいる。
「何時に行くの?」
「10時にスタジオを予約している。下地の化粧はここで8時から始めよう。これはブログ仲間のカメラマンに頼んで10時から5時まで押えている。疲れたらそこで切り上げる約束だよ」
 これはかえでが希望していた撮影だ。だが体力が少し回復するのを待っていたのだ。私は彼女が用意していた衣装をトランクに詰める。それからかえでがすみれの顔を作る。
「凄い!」
 助っ人で来たともこと静江が入口で声を上げる。ともこは1時まで静江は5時まで撮影の助っ人をしてくれる。とくにともこは私の女装は初めてだ。
「ともこに似ているでしょ?」
「私よりずっときれいよ」





テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢1

 やはりかえでは辛そうだ。朝起きるとしがみつくように私の体に抱き付いている。痛みか小刻みに震えている。
「タクシーで送ろうか?」
 今日は今年最後の病院の検診と薬を貰いに行く日だ。入院しない代わりにこれだけ約束させた。
「いいよ。少ししたら落ち着くから」
「出てくる時間に待っているよ」
 そう言って私は銀行に出た。静江も今日はかえでが病院に行く日だと知っている。それで手際よく両替の準備をしている。玄関のシャッターが上がって父が入ってくる。
「何を持ってきた?」
 小声で静江に聞く。
「昨日も来られていて代表者の変更よ」
 かえでから私に代表者を変更している。血の気が引いていく。やはり準備しているのだ。
 10時にかえでが病院に入るので朝の両替を終えて原付で10時半に病院に到着する。受付に入るとかえでの姿はまだない。もしかえでがいなくなったら生きていけるのだろうか。だから静江をくっつけたのだが。時計が11時を回る。
 イライラしているとともこの顔が覗く。
「どうしたんだ?」
「お父さんがかえでの病院に付いて行ってくれって」
 父はまるでかえでが娘のようだ。いや恋人かもしれない。その後からかえでが少し顔色がよくなって現れる。
「来たの?」
「心配だよ」
「姉さんが来てくれた。造血剤を打ってもらったの」
 私がついかえでの手を握るのに、
「早くかえで離れをしないと」






テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り12

「私は賛成よ」
 かえでに姉が飛田で働く話をした。
 それで夜におかんの店に私が連れて行くことになった。私は父にもう少しその後話を聞いていた。姉は日系ホテルの従業員をしていて夜は小遣い稼ぎで抱かれていたようだ。だが父はだけどもと言うか飛田で働かせたくないようだ。だが口には出さない。
 8時にマンションに迎えに行くと一人でいたのかともこが出てくる。
「父の世話にはなりたくない。だから働く。もしひろし君がいいなら抱かれてもいいよ」
「いや、今日はかえでの話を聞いてほしい」  
 どうもぎこちない。
 おかんの店に入るともうかえでが指定席で騒いでいる。私はともこを挟むように座る。だがかえでは座るなりひそひそ話を始める。ともこが笑っている。どうも仲間はずれにされている。一人でビールを1本空ける。かえでが何やらスマホを見せている。最近買ったようだ。
「嫌だ!」
 ともこの声に画面を見る。かえでがすみれのおっぱいを吸っている。
「全部話しちまったよ」
「ともこもすみれとしたいだって」
「それは不味いだろ?」
「何でもありなんだよ。でも姉さんは飛田では働かないことにしたわ」
「私お父さんのあの店を手伝うよ。今度すみれの時に会いたいわ。静江さんの話も聞いているから」







テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り11

 あの日からすみれの踊りが有名になった。出版社からは2作目の依頼が入った。それで今書いている作品を提出することにした。これはかえでに再開した日からの物語だ。かえでは元気な時はせっせと私の小説の挿絵を倉庫に貯めこんでいる。
「私が死んでもいいように一杯貯めておくよ」
 これが口癖になっている。
 父が今日直接飛田の店に出てくると連絡が入った。年を超えるのではないかと心配していた。さすがに今の店をそれ程休んでは迷惑になる。中休みの3時に飛田の店に入る。
「父は?」
「今集金に回っています」
 女将から言われて出されたコーヒーを飲む。半時間すると平さんと父が帰ってくる。
「どうでしたか?」
「ああ、昔のところに住んでいた」
「奥さんと娘は?」
「元気だったが…」
 歯切れが悪い。炊事場からすみれに似た女性が顔を出す。
「ともこだ」
「姉さんになる?」
「2つ上だよ。困ったことに再婚してともこだけが一人暮らしをしていた。新しい父とうまくいかないのだそうだ。この飛田で働くと言っている」
「しばらくそれは待ってください」




テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り10

 ジャンバーを着て原付に跨る。今日は3時に早退を届けているので食事抜きで回る。静江も今日は私とは別に休暇届を出している。銀行を出ると慌ててマンションに戻る。部屋にはもう化粧を済ませたかえでと静江が鏡の前で待っている。私はかえでに素っ裸にさせられると静江が下着を着せる。かえでは私の化粧に専念している。
 それから呼んでいたタクシーに乗る。ミナミのホテルまで20分ほどだ。入口には女装のファンが溢れている。これは出版社が宣伝も兼ねて新人を集めてパーティをする。かえではここではベテランだが私は新人だ。共著になっているから二人で挨拶をする。すみれには女装のファンが多い。これは私の処女作でかえでのお気に入りで挿絵を彼女が描いた。
 これは病院でかえでと暮らした日々を描いたものだ。あの頃描いていた画帳はすべて母の退院の日に処分された。あくまでも頭の中に残っていたものを小説にした。題名も『橙の電車』とした。
「初めて入れた時のこと覚えている?」
「覚えている。ひんやりしていた」
「私は暑い棒を入れられたみたいだったよ」
 静江がシャンパンを注いでくれる。私はひと口飲んで舞台の上で華麗な踊りを見せる。このために部屋の中でかえでから厳しい指導を受けてきた。かえでの挿絵にある踊りだ。客席から女装のファンが飛び出して来て踊る。かえでも静江も踊っている。
「私より人気があるみたい」
 かえでが胸をつんと突く。
「私女装男に見られた」
 静江がすみれの腕を抱えて言う。
「ねえ、今日はラブホテルに泊まらない?行きたいと思っている店があるの」
 私はかえでともっともっと思い出を作りたい。





 

テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り9

 3人の飲み会以後妙に静江に気を使わなくなった。今まで以上に両替の手伝いをしてくれて、あれからもう3度もおかんの店に集合している。父は予定の半月過ぎても中国から戻ってきていない。母はあれから何も言ってこない。何とかお好み屋を続けているのだろう。
 今日は残業なのでおかんの店にはいかないとかえでに伝えている。9時半に銀行を出る。最近は融資の仕事はこちらに回される。その代り両替の仕事は各担当者の地域に分けられた。この時間ならまだパソコンをやっているだろうとドアを開けるともう布団に潜っている。
「寝たのか?」
と言いながらスーツを脱いで下着になる。最近は仕事中でもお気に入りの下着をつけている。いつものことで冷蔵庫から缶ビールを出してきてチーズを皿に入れる。
「こっち見て?」
 布団が捲りあがって全裸の女が抱き合っている。抱きかかえられている女を見て吃驚した。静江だ。
「私がしっかり抱いてあげたよ」
と言って小さな乳首を吸う。
「ほらすみれのちんちんが立ってきたよ。すみれは化粧しなくても肌がきれいなの。私はダメ」
「布団に入ってもいい?」
「私の言うことを聞くのよ。今日は私が彼女を抱く約束したから。まず静江の唇を吸う」
 言われた通りにかえでの代わりに彼女に重なって唇を吸う。燃えるように熱い体だ。それからかえでの手が静江の両足を拡げる。二人でオナニーをしていたのだろうか濡れている。かえではつるつるだが静江は柔らかい毛が生えている。
「ゆっくり入れのよ」
 ここも冷たい感触のかえでと違って熱い。
「どう静江気持ちがいい?」
「うん」
「そんなに擦ったらダメ。静江早く口で出してあげて」
 彼女の口の中も熱い。我慢できずに射精する。それを静江が呑み込んだ。



 





テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り8

 かえでの提案で初めておかんの店に静江を誘うことになった。かえではもう何度も静江と会っているが、私は逆に気まずくて顔も合わせられないでいる。かえでは一時からすると元に戻ったくらい元気だ。だが桔梗に戻らないのは芯からよくなったと思っていないからだ。
 6時にいつも通り静江が帰り私は集金袋を詰めて7時半に銀行を出る。おかんの暖簾を潜ると指定席に姉妹のように仲良く座ってビールを飲んでいる。私を見るとおかんが隣の席を押しのけて私を座らせる。
「最近姉さん見ないね?」
「中国に旅行に行っているの」
と平然とかえでが言う。それから静江の耳元で何か囁いている。すると静江の顔が真っ赤になる。
「ひそひそ話はよくない」
「じゃあ静江がひろし君に伝えてあげて」
と言って自分の席を私と変わる。かえではそのまま私のビールを飲む。
「玉がなくて・・・竿だけ」
 静江が小さな声で耳元で言う。
「静江はねえ、高校の2年生から3年生まで付き合っていた恋人がいたんだって。最後まで行ったってよ」
「どうして別れた?」
「東京の大学に行ってそのままに。でもどうして女性に?」
「かえでに化粧をしてもらって凄く馴染んだ」
「すみれが好き。今度すみれと会いたい」
「そうじゃなくってすみれとやりたいと言うのよ」
 9時半まで妙に盛り上がった3人だった。かえでの熱い気持ちが伝わってきた。





テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り7

 かえでがデパートに行って土産を買って父に渡した。父は翌日に中国に立った。親子の人形を買ったようだ。だが歩き回れるが夕方になると疲れるようで私が帰って来るまで寝ているようだ。私もようやく融資の決裁をもらって実行をした。長期融資ができると一人前と言われる。
 珍しく支店長が酒を誘ったが用事があると断った。いつものようにビールを買って部屋に戻る。
「只今!」
 部屋を見るとかえでの姿はない。もう8時になるのにどこへ出て行ったのか?するとドアが開いてかえでが買い物かごを持って戻ってきた。
「ごめんね、すき焼きが食べたくなったの」
と言うなり用意していた鍋に野菜と肉を盛り上げる。1杯だけお酒で乾杯した。
「何か嬉しいことあったのか?」
「ええ」
 くすくすと笑っているばかりだ。
「でも怒らないことを約束してください」
「怒る?そんなことはない」
「今日銀行に行って静江さんと夜に会う約束をしたのです」
「静江?」
「彼女私がブログを書いているかえでと知っていたわ。それで私はひろし君がすみれと教えた」
「そんな馬鹿な!」
「2時間も話をした。本当の話をしても彼女はひろし君を愛しているって」
「どうして?」
「私は私がいなくなった後が心配なの。そうでないとお父さんのように」
「いいのか?」
「今日は久しぶりに抱いてね」




テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り6

 かえでが散歩できるようになった。それで父はここ1週間弁当を作って持ってこなくなった。
「お父さん、11月に中国に行くと言ってたわ。複雑じゃない?」
「いや、なんだかほっとした」
 これは本当の気持ちだ。父と母を見ていて何となく父が可哀想に思っていたのだ。そういう私もかえでに会っていなかったら同じだったろう。
 今日は8時におかんの店に1月半ぶりに覗く。それもすみれとして行くように約束させられた。それで7時半に戻ってきて久しぶりの化粧をする。
「少し顔が白くなったな?」
「すみれは黒くなったわ」
 そう言い合いながらおかんの店に入る。
「どうしたの?ひろし君も来ないし、かえでも」
「二人とも仕事が忙しくなったの」
 私が説明する。
「わあ。どて懐かしい!」
「ビールは控えめでねかえで?」
「すみれが私の分も飲んで?」
 常連が二人を見詰めている。おかんはその目を監視している。とくに不良の親父が一番危ない。
「雑誌社から返事が来たけど読んでみる?」
とコピーした紙を渡す。すみれの小説1号が本になるようだ。挿絵はかえでとなっている。
「おめでとう!でも私が先輩よ」
と言ってキッスをする。さすがに店の中は大騒ぎだ。









テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り5

 最近は静江との昼ごはんは控えている。だが今日は強引にグリルに呼び出された。彼女は薄化粧をするようになっている。それで妙に大人っぽくなっている。営業の男性が告白して断られたという。
「最近このブログのファンになってるんです」
 彼女がコーピーしたブログを見てドキリとした。何とかえでのブログだ。最近はかえでとすみれのブログとなっている。私のブログをここに引越しさせたのだ。だからプロフィールの写真は二人の黒のTバックで抱き合っている写真をかえでが貼った。
「エロいのを見てるんだね?」
「エロくなんかないわよ。二人とも大好き!」
「どちらが好き?」
「どちらも好きだけど、私はすみれさんが大好き」
 何だかうれしい気がした。
「それとこのかえでさん私が通帳を作った人じゃないかと思っているの」
「まさか!」
 夜銀行に戻ると串カツ屋の会長の紹介の酒屋の建て替えの融資を書いている。これは本来地域的は代理の仕事がだ私に譲っている。銀行では融資は代理がほとんど扱うようだがこの代理はずっと預金畑だ。今度は繋ぎ資金ではなく長期資金だ。それに店と倉庫の他は賃貸物件になっている。
「10年じゃなくて7年で済まんか?」
 古い人は10年を嫌う。だが返済余力を見るとどうしても10年だ。支店長はそれでも判を押して帰る。私は8時には店を出る。最近はかえでは9時まで起きていれる。たくさん話をしておきたいのだ。






テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り4

「親父いいか?」
 頼母子の集金に寄った時炊事場の父に声をかけた。父は最近は店のおかずも作るようになっているようだ。家を出てスーパーに寄ってから店に出る。だからその食材でかえでの食事を作っている。
「これかえでからだ」
 封筒に50万を入れている。
「これは?」
「中国に奥さんと娘がいるようだな?」
「・・・」
「これで会いに行けって。母は知っている?」
「いいや。かえでさんに初めて話した」
「どうして?」
「彼女を見ているとなんでも話したくなる」
「受け取ってくれ?かえでのしたいことは何でもさせたいんだ」
「分かっている。でももう少し元気になってからにしたい」
 今日は8時には銀行を出た。酒屋によって缶ビールを半ダース買ってマンションに戻る。
「お帰り!」
 珍しくかえでが起きている。
「お父さんに渡した?」
「ああ、だけど元気になってから行くと言ってたよ」
「だったらどうしても元気にならなくっちゃ!」
 缶ビールを開けてコップに入れる。おかんの店に行かなくなって1月にはなる。かえでが起き上がってコップを差し出す。
「今日は飲みたい気分よ」
「いいのか?」
「うんー、美味しい!」
「美味しいっていいことだな」
「そう、すみれのあの小説本になるようだよ。返事が来た」











テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り3

 私はあの融資で今年の新人賞をもらうことになった。それで今日は本店の会議室に朝から呼ばれた。支店長が自慢そうに付き添う。融資の判を押したがらなかったのに、まるで自分が賞を採ったように役員に挨拶しまくっている。この人はこうして年を取っていくのだろう。
「コーヒーでも飲まないか?」
 今賞を手渡してくれた常務が肩を叩く。
「君は銀行員になりたくて?」
 大きなテーブルの椅子に常務は腰かけて聞く。
「私は小さい頃病院に入っていました。母からは見放されたままようやく浪人して私大を出て、ひっそり生きようとして生まれた大阪の街に戻ってきました。何の夢もなく希望もなく・・・」
 常務は黙ってコーヒーを飲んでいる。
「それがここで失っていたものを取り返したのです。今はそれで精一杯です」
「そうか。その決着がついたらまた話そう。平さんはあの彼女と出会ってから全く変わったのだ。それまではただのやる気のない男だった。だが彼女に店を持たせたいと頑張った」
 そうだ。私も時間のないかえでのために変わらないといけない。本店を出るとわざわざ環状線に乗った。左側の窓に子供のように顔をくっつける。窓の向こうに病院の非常階段が見える。小さな女の子が手を振っている。
 かえでは最後の大切な時間で私に会いに来てくれたのだ。私はかえでの最後まで精一杯彼女ために生きよう。そう思うと駆け足て戻りたくなった。
 部屋に入るとパソコンを開いたままかえでは眠っていた。横に座るとかえでに凭れてパソコンを覗く。これは送信した後だ。送り先はかえでが本を出している出版社だ。すみれとかえでが出している童話の出版の話だ。これは聞いていた。OKの返事と合わせて私の古い小説が送られている。



 




テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り2

 父が毎朝訪ねてくるようになった。8時に朝ごはんと昼ごはんと夕食まで拵えてマンションに来る。まるで娘に仕える母のようだ。父にはかえでのことは話した。
「会社の登記は済ませたけど次は?」
 窓際に布団を立て掛けてかえではもたれている。病院に行った日より元気にはなっている。父がかえでに登記を見せている。
「雑誌社の口座の変更を頼みます」
 この会社はかえでになっていて取締役に私が入っている。通帳も父が私の銀行で作ったようだ。口座には何と祖母の遺産も入れて5千万ほど入っている。
「あまりパソコンをしないように」
と私が銀行に出かける。父は10時半まで側で手伝いをしているようだ。
 夜は父は来ない。私が戻ってくる頃にはかえでは壁に凭れて寝ている。体力がなくなったのだ。私は戻ってくるとかえでの横に座って缶ビールを手に食事をとる。それからパソコンを開く。かえでが昼の間かなりの絵を描いている。ほとんど私の書いていた過去の小説の挿絵が出来上がっている。
「ひろし君」
「目を覚ました?」
「お父さんね、初めて昔の話したよ」
「昔?」
「お父さん、中国にいた話は聞いたことない?」
「聞いたことはないな」
「結婚するまで中国にいたそうよ。親の危篤で戻ってきて家を継がされたそうよ。中国に奥さんと娘がいたって。私が生きている間にお父さんを中国に行かせてあげて。お金は通帳から出して」
「ああ」
 答えた時にはもう眠っている。








テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

思い出作り1

 真夏が過ぎかえでが寝込んだ。ここ10日間桔梗にも出ていない。
「私がやるから銀行に行って」
 かえでの下着が鮮血で真っ赤だ。今まで何度かあったが今度は量が多い。下着を脱がしてお湯を染ませたタオルで丁寧に膣から流れた血を拭き取る。かえでは嫌がるがもう拭き取る力がない。人形のように寝ているしかない。
「今日病院に行く」
「嫌」
「ダメだ!」
 今までにない私の強さにかえでが驚いている。私は病院の予約を取ってタクシーを呼ぶ。
「これだけは約束して?」
「病院には行くんだぞ」
「もう入院は絶対しないから」
「分かった」
 病院に着いてすぐに診察室に通される。私は9時から1時まで待合室に座っている。1時には別の部屋に私だけ通される。
 昔秘密基地に入っていたあの医師が部長になっている。
「彼女も君もこことは縁が深いな。かえではすでにここでは余命なしとなっている」
「それで?」
「治療の方法がない。閉じ込めておいても可哀想だ」
「死を待つだけと言うのですね?」
「精々いい思い出を作ることだな」






テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

それぞれ12

 今日は銀行に祖母が死んだと休暇を出した。だがこれは嘘でかえでの老人ホームに入っていた祖母だ。私も病院に入っているときよく顔を見た。私はネクタイを締めてかえでと早く起きて泉州まで行く。10時には老人ホームの会議室に入る。中に入るとかえでは顔見知りがいないようで私の横に座る。
 20分して見覚えのある母親が見たことのない年配の男と入ってきた。
「あれ、4人目の夫よ。今度は15歳も上だそうよ」
「彼が病院で一緒だった?」
「そうよ。偶然に出会った」
「どう?一緒に住まない?主人がかえでを気に入っているわ」
「母の男に抱かれるのはもうごめんよ」
 かえでの話では3人が3人ともかえでを抱いたようだ。ひょっとしたら母がけしかけているようだとかえでは言っていた。話をしていると黒いスーツを着た男性が側に来た。彼が知らせてきたようだ。
「お母さんは遺言を書いておられていました」
と遺言を二人に見せている。私はかえでの横で相手の男性を見ている。勤め人と言う感じではない。今かえでの母は雇われママをスナックでしているという。
「なぜなの!」
 祖母は昔持っていたスナックを売って老人ホームに入ったようだ。その金がまだ1千5百万残っていたようだ。葬式代と墓代を残してすべてかえでに譲ると書かれている。
「私も死んだらひろし君しか財産を残さないから」
と言うと私の腕を引っ張って外に出る。
「すっきりしたわ。これで私の唯一の縁はひろし君だけ」








テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

それぞれ11

 7時半に来るようにと平さんからメールが入った。私は急いで集金の集計をして袋に詰める。静江たち女性陣が帰って支店長が店を出る。7時10分私が慌てて裏口から出る。急ぎ足で飛田の表通りを抜ける。5分前に着いたようだ。店の端で父とかえでが何やら書類を渡している。
「悪いこと相談してないか?」
「お父さんに言う言葉ではないよ」
 かえでが睨む。父は慌てて書類をまとめて炊事場に入る。表に車が止まった音がしてドアが開く。常務が一人入ってくる。平さんが迎えに出ている。
「ここは若い子が増えたな?」
「紹介するよ」
「昔はよく来たな」
 常務がかえでを指名したらどうしようと思っている。だが常務は私に握手を求めて席に掛ける。
「あの串カツ屋君の店の柱になるぞ。あの店が伸びないのは柱になる取引先がないからさ」
 ビールをママが運んでくる。
「どうや。金融は?」
「ボチボチや」
 二人はやはり同期だ。金融の話もしているようだ。常務は業務推進部長だ。
「今度はブロックごとに競争をやる。君の店は小型店いや閉鎖候補グループだ。7店のうちどんべを廃店をする」
「早く辞めてよかったな」
 平さんと常務は正反対の性格だが気は合う。2時間かっきりで常務はタクシーでまたミナミに走る。私の融資を祝ってくれてようで支払いは常務が払った。入れ替えにかえでが2人で入ってきた。今日はここで飲むと決めていたのだ。
「彼女フィリッピン。可愛いでしょ?まだ17歳よ。この近くのアパートに5人で住んでいるよ」
「かえでの恋人?」
「彼女なの」
と二人で撮った写真を見せる。
「凄い美人!」




テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

それぞれ10

 朝10時に8億の融資実行の日支店長が自分が決裁したかのように応接室で会長と握手する。両替配達を済ませて戻ってきて汗を拭いながら私は司法書士と登記の確認をする。応接は開かれていてカウンターにかえでがどうしたわけか静江と話している。彼女は口座を別の銀行で持っている。
「実行のお金入れたよ」
 静江が通帳を渡す。串カツ屋の株式会社の通帳は初めて作った。今までは会長の個人口座だけだった。小さな声で、
「凄い綺麗な人ね?」
 これはかえでを指しているようだ。初めてかえでと静江が会った。かえでには静江の話は同期だと話している。
 夜おかんお店にかえでがいつもより遅く10時に来た。
「最後に常連が入ったの」
 彼女の客はほとんどブログから来る常連ばかりだ。古いブログではエッチな会話を載せていたが、最近はコメント返しをしないと宣言している。
「可愛い子ね?」
「どうして来たんだ?」
「ひろし君の初融資を見たかったし、私のお金こちらに移し替えることにした」
 最近はかえでは身の回りを整理し始めたような気がする。
「彼女ひろし君を見る目愛してるわよ」
「いや、両替を手伝っても立っているんだよ」
「将来結婚したらいいよ」
「なぜそんなこと言うのだ」
「だって私もうそう生きられないから。バトンタッチしないと」
「だから籍を入れよう」
「籍も入れないし子供も作らない」






テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

それぞれ9

 かえではもう私が銀行を辞める気でブログですみれと専業で漫画描くよと言っている。二人の絵物語は課金にしたが思わず人気だ。これは従来の漫画と言うより私の文章を前に出した童話の世界になっている。かえでのパソコンの中にはすみれが書いている小説の挿絵がどんどん挿入されている。
「今夜は退職祝いをおかんの店でしようよ」
 この調子で朝送り出された。それで妙に融資の件は腹が括れた。本店で否決されたらされたら辞表を出して会長に謝りに行こうと決めた。
 午前中に午後の分も頑張って集金を済ませる。3時から1時間半を串カツ屋のために空ける。代理は融資の件から顔を合わせようとしない。一人で謝りに行くしかない。静江とグリルで約束のように1週間に一度昼食を奢る。いつものように私が早く戻ってきて両替の袋を鞄に詰める。
「おい、融資部長からだ」
 次長が呼ぶ。あまり何度も稟議が出るので判を横に押して次長と支店長が本店に稟議を送った。次長が受話器を差し出す。稟議の説明ができないのだ。
「この融資期間1年は守れるだろうな?」
「はい。建物の解体と表示登記が済めばメインバンクが長期融資で」
「決裁だ」
「融資してもいいのですか?」
「そうだ。この件では常務にお礼の電話をしておくんだ」
 常務?教えられた常務の内線に入れる。
「君か?よくできていた。平さんの後輩だそうな?また夜の平さんお店で飲もう」
 夜おかんの店でかえでに伝えると、
「なんだ」
と失望した声を上げた。でも握手を求めてきた。




テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ
プロフィール

yumebito86869

Author:yumebito86869
もう記憶の中で小さくなってしまているが、
小さい頃病院で隔離されていた時期があった。
その時隣部屋にかえでと言う毛糸の帽子を被った少女がいた。
童貞を失ったのもかえでだ。
何もかもう失った時、私はすみれとして彼女と再会した。
また短い時間だったが私の中で一生光り輝いている。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR