銀河鉄道6

「体調はどうだ?」
「少し貧血気味だけど?」
「桜を見に行こうと思っている。今度の病院に行く日休みを取るよ」
「それなら今度は電車で行きたいわ」
「分かった」
 銀行に着くと常務に呼ばれた。
「どうだ出来たか?」
 言われると思って稟議書を持ってきた。今度は親会社のビルの管理会社だ。24億の融資を常務がまとめた。昨日は一日中そのミナミのビルを調査に行っていた。この古いビルを買って解体するようだ。こちらは都銀に比べて金利が高いので購入費1年短期で貸す形にしている。
「これで第3位の融資額になりますよ」
「分かっている。だからすでに根回しをしている。この新店でこの銀行が生き残るかどうかが決まるのだ」
 夜には戻ってきた父と会う。8時半に平さんの店に入る。
「今度は遂にビルに貸すのだってな」
と平さんにはすでに情報が入っているようだ。
「父の件では迷惑かけています」
「いやいいんだ。今度炊事場から外して貸し付けの専業にと考えている。なかなかの営業マンだよ」
 一人でビールを飲んでいると、父が炊事場の暖簾から出てきた。
「どうだった?」
「結局妹の旦那が取り立て屋に脅かされて彼の母の預金で200万と金利を払った」
「母は?」
「妹から仇のように言われて大阪に戻ってきた」
「別れないのか?」
「そうもいかない」
「母は?」
「ホテルにいる」
 私は黙って持ってきた50万を出した。















スポンサーサイト

テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢9

 元旦ともこは中国から来た時に持っていたトランクを持って出て行く。かえでは二人のセックスには加わらずいつのまにか寝ていた。朝も目が覚めたようだが布団に横になったままだ。それでも新しい住まいまで送って行けと私を追い出した。私はともこのトランクを引きづる。
「中国の家族と離れて寂しくない?」
「母が再婚してからは一人ぽっちだった。私は日本に来て幸せだよ。父も優しいし、弟は私を抱いてくれた」
 正月の商店街は寂しい。だが飛田の門をくぐるともう女の子の座っている店もある。桔梗の前を通るとやり手婆が大きな座布団を並べている。店の前を通り過ぎると石垣の階段を上がり細い路地に入っていく。2階建ての木造のアパートが並びその外付けの階段を上がる。
 古い扉に鍵を差し込むと4畳半の部屋はがらんとしている。年末に布団と炬燵を買ったばかりだ。
「風呂もトイレもないんだな?」
「風呂は毎日店で入れるよ。共同トイレだけどここは飛田の女性だけしか入ってないもの」
「桔梗はいつから出る?」
「今日の3時から。当分9時まで。かえでの名前貰ったよ」
「それもかえでと話していたんだな?」
「そう、店も幻のかえでを売りにしたいみたい。かえでは自分が生き続けるのがうれしいと言ってくれたわ」
 ともこは途中で買ったお茶を入れてくれる。
「ここで頑張ってお父さんと暮らしたいの」
「時々飲もうよ」
「うん、楽しみにしている」









テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

銀河鉄道5

「桜まだかなあ」
「今年は少し遅いようだな」
 かえでが朝送り出してくれる。
 今日は常務と私が誘われている。それで6時には銀行に戻ってきて一緒にタクシーに乗る。携帯にともこからメールが入っている。
『父が新潟に行きました』
 それを見て嫌な予感があった.。
 タクシーが付くとビルの玄関に息子の専務が立っている。この店は父親が自分のビルにクラブを出している。ミナミでは老舗のクラブだ。エレベータで上がると廊下にホステスが迎えに来ている。その後ろから華僑の社長が顔を出す。上物肩を抱くように中に入っていく。広いボックス4人の間にホステスが座る。
 息子がホステスに代わって隣に座る。私はもちろん昼間は立派な男のサラリーマンだ。だが近くで見ると顔はつるつるだ。髭がホルモン注射で生えない。
「私より肌がきれいね?」
 息子が手を擦りホステスが顔を摺り寄せてくる。常務と社長はビルの融資の話になっている。私はメモを出してきて融資の話を記録する。9時にようやくお開きになってもらったタクシーチケットでともこに携帯を入れた。おかんの店で代理と飲んでいるようだ。久しぶりの暖簾を潜る。
 ともこが席をずれて私を座らせる。
「連絡あった?」
「お母さんは今は妹の家にもいないようなの」
「どうして?」
「妹が200万をを持ってきたときはもろ手を上げて迎えたようだけど、取り立て屋が来てから追い出したようよ」
「やはりな」
 代理はぽかんと聞いている。親父も妹の家には泊めてもらえず、近くのホテルにいるようだ。






テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

銀河鉄道4

 手が空くとついかえでの遺書を開いてしまう。どんどん新しい言葉が書き加えられている。今年の桜は見られるのだろうか。かえでの言葉を思い出す。
「たまには付き合えよ」
 銀行の扉を閉める時に代理が声を掛けて来た。それでおかんの店に寄る。
「ともこと飲むのじゃないの?」
「いや、ちょっと喧嘩してな」
「どうして?」
「最近この店に誘っても来ないんだ」
 父が来てからだそうだ。
「今父が泊まっているからだよ」
「お父さんて幾つ?」
「50代半ばだ。ともことは長らく会っていなかったからな」
「そうそう、うちの親父が心配していたけどお母さんどこに行った?」
 思い出したようにおかんが声をかけてくる。
「お母さんを追いかけて取り立て屋が新潟に行ったってよ」
「どうして新潟と?」
「住民票を調べて妹さんの転出先を調べたって言ってたよ」
と話を聞いて気になって父の携帯を掛ける。9時半ならもうマンションに帰っている時間だ。しばらく呼び出していて出てきたのはともこだ。
「父は?」
「ああ、今戻ったところだよ」
 なぜかわざとらしい。
「母に取り立て屋が新潟に向かっていると伝えて」
と少し気まずくなって切った。

















テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

銀河鉄道3

 父の住んでいるマンションの解約届をおかんに出だして、日曜日に私とともこと静江で未明に起きて荷物を引越しした。ドアに嫌がらせの張り紙が貼られていてポストの中は請求書で一杯だ。よくも母に2百万も貸したと思う。母はお金を借りるとそのまま妹のところに行ってしまった。
 9時にはともこの部屋に集合した。すでに父は起きていてみんなの朝ごはんを作っている。かえではゆっくり歩いて30分遅れてやってくる。初めてともこの部屋に入るが4畳半のワンルームにどうして父がいるのかと思うほどだ。
「母から何とか言っていた?」
「いや連絡はない」
 さすがに父も疲れたようだ。横でご飯を食べながらともこにかえでが耳元で何か囁いている。急にともこの顔が真っ赤になる。
「何を話している?」
「お父さんに抱かれた話をしたのよ」
「かえでは・・・」
 かえでにとってセックスは会話のようなものなのだ。
「でもここにいつまでもと言うのは?」
 静江らしい意見だ。さすがに父と娘でもこの狭い部屋ではあまりにも刺激的だ。父が困った顔をしている。ともこが打ち消すように、
「私はいいのよ。この際思いきり父との生活を取り戻したい」
「静江ももうすぐ引っ越してくるわ」
「3人で暮らすのね?たまには泊まりに行ってもいい?」
「いいよ。みんなとしっかり話ししたいもの」
 父には内緒だが私はともこを抱いたことがある。かえでと暮らしてこういう感覚が麻痺している。かえでの中はひんやりしているが、ともこの中は燃えるように熱い。だがキッスするときはすみれにキッスするような不思議な感触がある。それ程血を分けた姉弟は似ているのだろうか。






テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

銀河鉄道2

 オープンして2日、珍しくかえでからメールが入った。今日は出来るだけ早く帰ってきてと。8時に通りで珍しく野菜ケースを抱えたおかんに会った。
「あんたのお母さん結構危ない人ね?」
「どうした?」
「不良親父の馴染みの金融屋から金を借りたらしいよ。ここはやばいよ」
 やはりと舌打ちをして頭を下げて歩く。マンションの鍵を差し込むとエプロンをした静江が顔を出した。
「オープンお祝いです」
「かえでは?」
「いつもより元気です」
 部屋の中に入ると布団が上げたれていて、炬燵の上に焼肉の鉄板が乗っている。
「開店成績が2位だったのね?」
 静江に銀行の業務日報を見せられたようだ。
 テレビにあのDVDがかかっている。だがこれは販売されているぼかしのない原版だ。焼肉が乗せられビールがグラスに注がれる。
「今日は私と静江のバトンタッチの時期だと思っている」
「かえで姉さんはそればっかり」
「静江は準備できてる?」
「母は口説けたけど父はだめ。でも決行する」
「二人で何をしているんだ?」
「4月までには静江がここに引越ししてくる。3人で暮らすのよ。でもいつまで私が持つか自信がない」
「なぜそんなにかえでは死ぬことに自信がある?」
「それは自信じゃないの。私に生命の音が消えてきているの」
と言うなり私のズボンを下げて久しぶりに口に含む。DVDを撮ってから含まれるのは初めてだ。大きくなったものを静江も加わった。どうもこれも打ち合わせ済みだったようである。でもかえでは自分の中に迎えることなく静江が全裸になって私を迎え入れた。これは儀式なのだ。










テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

銀河鉄道1

 3月26日がオープンの日だ。その前日に店内でささやかな打ち上げがあった。現在の数字で目標は十分達成している。口座数は1万件に対して1万2千件。預金は20億に対して40億。一番の目標融資量は30億に対して50億を達成した。総合でやはり代理が1位で予想外で私が2位となった。
 常務がグラスを持って私の横に来た。
「融資量では1位だ」
「いえ、あの常務に応援頂いたあの大口が大きかったのです」
「いや、君の先は口座数は少ないが将来性のある先が多い」
と言って乾杯して席を外す。その後代理が横の席に来た。
「ともこさんのことだが本当に姉さん?」
「ああ間違いない。父が中国で生んだ子です。出会ったのも最近です」
「すみれさんは?」
 何と伝えようか。私とは気づいていないようだ。
「すみれは日本の姉さんです」
「二人ともよく似ているな?やはり姉妹だからかな?」
「姉さんは何してる?」
「売れない小説を書いていますよ。でも手を出したらともこ姉さんは切れますよ」
「分かった」
と言うと席を替わる。そうして9時にはお開きになって代理からおかんの店に誘われた。
 おかんの店にはすでにともこが来ていてビールを飲んでいる。ともこが手を上げて私の耳元にすみれに手を出すなと言ってくれた?囁いた。顔を見たら真顔だった。
 2本目を空けた時代理がトイレに席を立った。
「彼あれからすみれのことばかり言うのよ」

テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活12

 父から携帯があり早退して病院に駆け付けた。タクシーを降りると窓口で声をかける。それから診察室の待合に駆け込む。父が俯いて座っている。
「どうした?」
「母さんがな。どうして調べたのかかえでさんのマンションに行ったんだ。昼過ぎに急に携帯があってすぐにひろしのマンションに来てくれと」
「何しに行った?」
「金を借りに行ったようだ。それがそこにかえでさんがいたのでびっくりした。でも被っていたピンク色の毛糸の帽子で昔病院にいた女の子と知ったようだ」
 かえではやも得ずドアを空けるときはピンク色の毛糸の帽子を被る。
「それからは母さんは何も言わない。だが相当の問答があったと思う」
 しばらくすると看護婦が出てきた。それで私が中に入った。
「彼女に入院を勧めてくれませんかね?」
と医者は困った顔で出て行く。
「入院させたら化けて出る」
「分かっている。母が来て迷惑かけたな?」
「余程お金困っているのね?100万を貸してくれと」
「はやり底なしだな」
「それで私の判断ではと言っているうちに、私のことを思い出した」
「それで体はどう?」
「もう賞味期限が切れているのよ」
 薬を貰ってタクシーで父を店に送り、かえでをマンションに連れて帰った。かえでは部屋に入ると自分で布団に潜った。そのうちに鼾が聞こえてくる。それからドアを出て母に、
「金は貸さない。かえでには会わないでくれ」
と一方的に言って切った。
















テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活11

 かえでが休日久しぶりに動物園を歩きたいと言った。3月にしては小春日和のような日だ。私は入念に化粧をしてすみれになる。昼まで二人でパソコンの作業をして次の作品の提出の打ち合わせをする。かえで&すみれの小説は人気が出て今は3社から原稿の依頼が来ている。かえでとしては初期の単独の漫画と童話が5作品、かえで&すみれになってからの小説が3作品、DVDが1作品出ている。
 珍しくかえでがおにぎりを作って私が缶ビールを下げて門をくぐる。
「寒くない?」
「ええ、暖かいわ。もうすぐ新店オープンね?」
「でも銀行員はあまり向いていないような気がする」
「なら小説家に専念したら?」
「でも一人じゃ自信がない。今も小説より挿絵の方が人気がある」
「嫉妬?」
 陽が陰るまでベンチに座っているが急に寒くなった。それでどちらからともなくおかんの店に向かう。
「すみれさん珍しいね?」
とおかんが声をかける。
「あれ!」
 かえでの声で指定席を見る。代理とともこがビールを乾杯している。さすがに代理と面と向かうのは危ない。でもかえでは代理の横に座る。そして私をひろし君の姉と紹介する。
「美人ばかりだなあ」
 代理は全く気付く様子がない。どうもともこは今日は休みを取って阿倍野で朝映画を見てきてようだ。4人で1時間飲んでともこたちはどうも今日はホテルに泊まるようだ。
「すみれも行きたい?」
「辞めとくわ」
 さすがにかえではもう疲れ切っているようだ。















テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活10

 母の支払いを街金と話をつけた。父にはその旨を伝えた。だが母がこれで終わるわけはないと言う気がする。
 営業をしていると携帯に常務から電話があった。今から戻ってくるようにと言うことだ。また資料を求められたのだろうか?原付で銀行の仮店舗に戻ると常務の机に行く。
「今から印鑑をもらってこい」
「決裁が取れたのですか?」
「ああ、これで開店は花ができた」
 私は電話を入れると必要書類とサインをもらいたいと伝えた。息子からは折り返しで3時に来てくれとあった。3時10分前に行くと社長がすでに戻ってきて笑っている。
「いい出会いだな?」
 息子が必要書類を運んでくる。
「実行が済んだら常務と食事をしないとな。これからは専務と仲良くしてやってくれ」
 サインをもらうと社長は部屋を出て行き、息子と作業をする。半時間ほど作業をして戻ることになって、
「あの横顔が女性っぽいですね?」
「いえ、初めて言われました」
 冷や汗が出た。確かにそういうようなことを言われてたのは初めてだ。ブログにもすみれとして顔を出している。
 戻ってくると書類を渡して融資の実行の用意をした。常務が側に来て、
「今日は早く帰れ」
と声をかけてくれた。
 8時に戻るとかえでが起きていてびっくりして迎えてくれた。それで今日の社長の息子の話をした。
「それは要注意よ。あまり親しくしないで」
「どうして?」
「男を愛する臭いがするよ」





テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活9

 母から何度も着信があった。父に携帯すると毎晩取り立てが来るようだ。それで父は店の2階に泊めてもらっている。そこまでしても離婚は考えないようだ。
 30億の融資は審査部長から役員会に上がった。それで常務と私が説明に出かけた。本店の帰りに母のいるマンションに寄る。3時過ぎだが若い男が2人インターホーンを鳴らしドアを叩いている。定期的に来ているのだろうか15分ほどすると下りていく。それからしばらくしてドアの隙間が空く。
「お母さん、話をしよう」
 部屋に中に入ると即席めんでテーブルが溢れている。私の記憶では病院を出てからも母の手作りの料理を食べた記憶がない。だが妹を連れて私に内緒で外で食べてきていた。
「なぜ返せないのに借りた?」
「妹をなぜ助けてあげないの」
「妹とは縁が切れていると思っている。だがこれを最後にするなら立て替えてもいい。もちろん返す必要はない。後は父と話してほしい」
 それだけ伝えると請求書の張り紙をポケットにねじ込む。その足でかえでのマンションを覗く。そっと鍵を開けるとパソコンを打つ音がする。
「大丈夫か?」
「どうしたの?」
「母に会ってきた」
「お金貸してあげて」
「悪いな。だがこれを最後にする」
「気にすることないよ。あのDVD凄いよ」
と会社からの報告書を見せる。現在でもう1千万の支払いが発生している。
「もう一つ撮っておこうかな。静江とひろし君のために」
 私はかえでにキスをすると銀行に戻る。






テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活8

 30億の融資稟議を上げた。副支店長と常務が揉めたが常務が押し切って審査部に送った。銀行内はこれで持ち切りだ。私は追加資料を審査部から求められえてこの会社の息子の専務のところを2往復した。常務も朝から本店に出ずっぱりだ。
 父からメールがあり平さんの店に9時に寄る。店には飛田を出てきた客と仕事が終わった女性が入り乱れ8人ほどがいる。父が炊事場からエプロンを畳んで出てくる。
「悪いな。忙しいのに」
「また母のことか?」
「街金から50万借りていて家に押しかけて来た。聞いたらまた妹に送ったようだ」
「親父はまだ頼母子の返済が100万残っているだろう?」
「そうなんだ。ともこが昼その話を聞いて用立てると言っているが断った」
「それがいい」
「だが」
「何とかするけど、しばらく街金の取立て親父我慢できるか?」
「私だけなら」
「すぐ返済したらまた借りるだろう。しっかり追い立てられてから返すよ」
 1本目のビールが空いて隣にいつの間にかともこが座っている。
「今日は代理とは?」
「延長が入ったので断った」
「うまくいっているのか?」
「それよりお母さんのお金の件は?」
「ともこが気にすることはない」
と新しいビールを頼んでともこと父のグラスに注ぐ。









テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活7

 常務と打ち合わせをしてここ3日提案書を作っている。だが今日は修正を言われて書き直している。10億の手形貸し付けとしたが30億にしろと×を付けられた。この融資で全店の融資最高額を調べて、30億を超える先が3社しかない事実にぶつかった。だが常務はだからこの銀行が伸びないのだと言われた。
 それで銀行を出たのは9時を過ぎていた。帰り道におかんの店を覗いたら暖簾の隙間から指定席に座っているともこと代理が見えた。マンションに戻ると炬燵にもたれたまま眠っているかえでがいた。一瞬嫌な予感がして揺り動かしてしまった。
「死んだと思った?」
「いや」
 最近は常に心のどこかにかえでが死ぬと言う恐怖が芽生えてしまっている。
「姉さんどうだ?」
「初めて恋をしたと喜んでいたよ。でも仕事は続けると言っていた」
「今日もおかんの店にいた。代理はバツ1だから心配はないけど、あれで猛烈社員だからなあ」
「姉さんも私と似たところがあるの」
「病気?」
「姉さんは病気じゃないよ。でもね、セックスに目覚めたようなの。私はひろし君と会ってセックスに目覚めた」
「かえですみれを作ったな」
 かえではパソコンを開く。
「このファイル覚えておいて。ここに遺言を書いている。思いつくごとに書き足している」
「やはり死ぬのか?」
「余命と言われてここまで生きてきた。すみれと別れるのは辛いけど、もう満足しているよ。だから悲しまないで」
「読んでもいいのか?」
「分からないことがあれば聞いてよ」
と言いながら私にもたれてもう眠っている。








テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活6

「姉さんもよかったねえ」
 ともこのことを話したらかえでが言った。
「朝ここに来てくれるから伝言ある?」
「知っていた?」
「いえ、夜にかかってきた。その彼にひろし君が会っていると」
「姉さんもよかったって言っておいて。ただ私がすみれだとは言わないで」
「それとDVD作ることにしたから」
「分かった。金を儲けてたらすべて買い戻す」
 手を上げてドアを出る。
 銀行に出ると代理は少し恥ずかしいのか先に原付で出て行く。今日は支店長の常務と同行だ。だから原付ではなく運転手付きの自家用車に乗る。あのテナントビルの社長と合わせることになった社長室に入ると、親を若くしたカニ体形の男がファイルを持って座っている。
「取引に出かけているので少し待ってください」
と名刺を出す。やはり息子だ。金融会社の専務の名刺を出す。
「社長からファイルを見てもらうようにと」
 私は受け取って常務に見せる。これは金融会社の会社資料だ。テナントビルの社長が兼務している。思ったより融資量が大きい。総借入が500億だ。競合している銀行の名前がある。常務の目がやはりそこを見ている。80億を融資している。その時社長がジャンバー姿で入ってきた。
「すいませんな。ビルの立ち合いでしてな。まず金融の方から付き合いできるかと?」
「この銀行の借り入れについて説明してください」
 常務が言うと、息子がコピーを取ってきて1時間説明する。
「提案書を持ってきますから時間をください」
 横にいる私が圧倒される常務の気迫だ。







テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活5

「DVDの制作会社からあれを再編集して発売したいと連絡があったよ」
 朝出る時にかえでから話が出た。
「もう撮影する体力はないよ」
「分かってる。詳しくはメールを送っておくから」
 新店舗開設はいよいよ後半に突入した。本店扱いで融資も取り扱う。串カツ屋の会長のミナミ店の融資を1億2千万を受けることになった。この際前の店から取引を移転する承諾も取った。頼母子の個人は残すこととした。代理も融資を始めて件数も金額もトップだ。
 8時半に書類をファイルに綴じこんで仮店舗の裏ドアを出る。まだ半数は残っている。歩いていると背中をポンと叩かれた。
「代理久しぶりですね?」
「今日は付き合ってほしいんだけど?」
と言って久しぶりにおかんの店の暖簾を潜る。
「私は内緒にしているがバツイチでもう1年が経っている」
「奥さんがいると?」
「銀行では信用にかかわるから言ってないけど、常務には話している」
「で私に話して?」
「まあ、1杯飲んでからだ」
 おかんが笑いながらビールを抜いてくれる。
「実は姉さんと付き合っている」
「姉さんの仕事知っています?」
「ああ、桔梗に3度出かけた」
「私にどうこうする力はないですよ」
「ともこさんは君に内緒でいるのは辛いと」








テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活4

 代理はやはり口座数トップで折り返し、私は予想通りどんべに位置している。あの日から代理は帰りに飲みに誘わなくなった。それでおかんの店にもしばらく行っていない。今日はともこが午前中にかえでの病院に付き合ってくれた。それで少し早目に銀行を出てともこの店に行く。かえでの病状を聞くためだ。
 8時半に平さんの店に入る。ともこには桔梗が引けたら覗いてくれとメールを流した。珍しく父がこの時間も炊事場にいる。
「どうした?」
「お金お金と言われるので9時まで延ばしたんや。この時間ならともことも会えるからな」
「ともこはここでよく飲むのか?」
「最近は忙しいので寄らんがな」
 ビールを1本空けた頃にともこが忙しそうに入ってきた。
「今日は悪かったな」
「かえではひろし君の彼女やからね。貧血は続いているようだけど、とくに先生は何も言うてないよ」
「姉さんも飲まないか?」
「少し人を待たせているから」
 もう立ち上がって出て行く。その後着替えて父が出てくる。
「熱燗がいい?」
「もらうよ」
「姉さんうまくいってるのか?」
 父はうまそうに熱燗をコップで飲む。平さんが2階から降りてくる。
「この前はすいませんでした。口座も作ってくれました」
「ああ気にするな。ともこさんも楓として人気やぞ。一度店訪ねるかなあ」
「あんた何言ってるの」
 女将が平さんの頬っぺたを抓る。
「彼女彼氏が出来たかも?」














テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活3

 3月には日本橋の支店予定地に近くに準備室が移る。口座作成が始まっていて案の定私はどんべで代理がトップだ。だがやはり帰りは代理が飲みに誘う。毎日のようにおかんの店に寄って帰る。今日は代理誘いを断って7時に店をでて平さんと難波のスナックで会う。
「いやあ、大変だろう?」
 同じ銀行員なので新店はしんどいと知っている。それで頼んでいた取引先を紹介してくれるのだ。隣にはカニのような体をした華僑が座っている。この人の会社は調査して知っている。もう何度も訪問したが会ってもらえないでいる。ミナミでは地元で1位、2位を争うテナント業者だ。子会社で金融もやっている。
「この名刺は何度も見ている」
「この社長は通天閣の串カツ屋の会長と昔共同経営をしていたのだ。今も会長の大口の頼母子の親でもある」
「会長は飲食から離れられなくてなあ。儂は初めは頼母子の金を使ってビルを買ったわ。いつの間にかミナミでは11棟持つことになった。金融は息子がやっているが実は平さんを番頭に呼んだが断られた。口座は開いてやるが融資は難しいぞ」
 1軒目で別れて平さんと社長は2軒目に出かけた。ここからぶらぶらと通天閣に向かって歩く。まだ9時にはなっていない。おかんの店の暖簾を潜る。いつもの指定席に代理とともこが座って笑って飲んでいる。私は思わす暖簾から出てマンションに帰る。
 この時間ならかえでは寝ているだろうなと鍵を開ける。
「ひろし君帰ってきた?」
「どうしてわかった?」
「何だかそんな気がした。久しぶりにビール飲む?」
 かえでがビールを入れてくれる。それから箪笥からピンクの毛糸の帽子を出してきて被る。普通は二人でいる時は鬘を付けていない。1本を空けるとかえでが唇を吸ってきた。
「あと何回出来るかなあ」










テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活2

 新店舗では事務机にいるのは最初の3日だけで、あとはめいめい日本橋の現地に足で向かう。すでに作られている顧客リストを自分なりに戦略を決めて1日100社ほど名刺を持ってまわる。それで2月も終わった。銀行に帰ってくるのは6時頃だがリスト作成で営業は9時までは本店の新店舗準備室に残る。
 ついつい7人の営業の中でグループができて11時半くらいまで飲むことになる。私の飲み相手はあの代理だ。結婚はしているようだが子供はない。阿倍野に住んでいるのもあって途中におかんの店に行くようになった。新店へ行ってからかえでとここに来ることもない。時々ともこと会う。
「奥さんは?」
「最初の店の先輩だ。嵌められたのや」
 飲むとこの調子だ。彼はやはり営業は凄い。1日100件が平均の方今件数だが彼は150件は回っているようだ。とにかく名刺を置いていく作戦のようだ。私は逆に今は1日50件ほどに減っている。私は資金重要の強い中堅を狙っている。とくに串カツ屋の会長の紹介が大きい。
「ひろし君最近は姉さんたちも来ないしどうしているの?」
とおかんに聞かれ、
「新店に行ったので疲れてなあ」
と濁した。
「へえ、珍しいな?」
 ともこが10時に顔を見せる。
「凄い美人だなあ?」
「異母姉弟の姉です」
 ともこが遠慮して私の横に掛けるが代理は飛び越えて話してくる。
 夜はかえでは最近は9時頃には眠っている。私も疲れていてかえでの横に倒れるように眠る。








テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

新生活1

 2月1日辞令が出て本店の人事部に集まった。集めたのは新支店長になる常務だ。その他に融資専担者の営業が7人、代理が2人がいるが私はその一番下だ。内勤は副支店長が次長を入れて6人配置された。営業は個人成績にすべて30以内に入っているものばかりだ。とくに代理の一人が5期通算1位の常務の片腕た。
 半月は人事部で研修と言うことだ。私の地域は一番の若手で原付で走るアメリカ村周辺から難波と言う辺境地だ。それぞれファイルを貰って6時まで情報収集だ。6時には営業だけを連れて地域の日本橋のクラブに連れて行く。どうも常務の常連のクラブのようでママが常務の横に座っている。私は一番端で同年代のホステスが座る。
「案外慣れているのね?」
「いや、いつも姉妹にいじられているから」
「でも何だか女の匂いがするわ?」
「おい、モテてるなあ」
 正面に座っていたあの代理が声を掛けて来た。
「俺は営業ではもう10年や。同期の大卒では一人すでに支店長が出た。もしこの支店で成功すれば常務は支店長を約束してくれている」
 確かに代理は心斎橋周辺を地域に持っている。
「お前も支店長に?」
「いえ、まだ銀行員を続けるかどうかも?」
 その夜メールが入ってきていて9時にはおかんの店に寄った。
「どうだった?」
「競争社会は合わないな。将来は今のブログを守って生きればな」
「でも一度新しい社会に入って」
 まるでかえでは母親のようだ。
「今日は静江が泊まれると言っているので私は飲んで寝るよ」






テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢11

 夕方メールが来てかえでからおかんの店に集合を掛けられた。夜銀行に帰ると静江が嬉しそうに先に行っていると伝えた。今日は朝ずいぶん調子が良いのか朝からパソコンを開いていた。私は7時に集金を終えて静江を送り出して急いで集計をする。
 おかんの店に8時に飛び込む。すでにかえでと静江がくすくす笑ってビールを飲んでいる。
「ひろし君、静江ともう4回もしてるのね?」
「いや、3回だと思うが?」
「いえ4回です。私すべて日記を書いているのです」
「静江ちゃんブログアップしたら?」
 9時を15分すぎるとともこが店の衣装にコートを着て現れた。
「わー!刺激的!」
「これかえでさんの衣装を譲ってもらったの」
 かえでの衣装は見たことがあるが30着は下らない。
「ついでにみんな集まっているので意見を聞きたい」
「それ何?」
「全員関係者だからなあ。前少し話があった時は断っていたのだけど、今の店から新店舗にどうかと常務に言われているんだ」
「へえ!寂しいわ」
 静江が小さな声で言う。
「静江は最後までひろし君と付き合うんだからそんなこと言っちゃだめ」
 私はひと通り常務の話をした。
「凄いと思う」
 かえでが賛成してともこがと静江が賛成をした。







テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢10

 正月が終わって母が父のマンションに戻ってきた。父の話では100万を渡したその日から母は家から追い出され旅館に泊まっていたようだ。それでも妹の悪口は言わない。父もまた母にそのことを尋ねない。死ぬまでそう言う関係を続けるのだろうか。
 かえでは体調は良くないが次々と私の小説の挿絵を描き続けている。私はかえでの作品を整理している。かえではすでに単独で5作品を発行している。それに連名の作品は3作品になっている。その他購読料を取っている作品が5作品に増えた。
「会社の口座にいくら入っているの?」
「5千万を超えたくらいかな。思ったよりあのDVDが売り上げが上がっている」
「姉さんとお父さんに幾らか回そうよ?」
「ああ、考えている」
 銀行に出ると昼から本店に支店長と表彰に行く。支店長は在任期間が来ている。今まででは本店の調査役と言うことだったが、今回で課長の道が出てきたようだ。私も新人で個人表彰に初めて入った。業務部長である常務から手渡しで表彰を受ける。その後自室に呼ばれる。秘書がコーヒーを運んでくる。
「これはまだ内密の話だが銀行は今後合併が続く。当行も指導を受けていて逃れることはできない。それで今年は最後の勝負に出る」
「勝負?」
 私には関係ある話とは思えない。
「この春に日本橋支店を作る。その支店長に私がなる。本来本店営業部長だが既存の店舗では融資量の拡大は難しい。それで新店で勝負したい。渉外はすべて融資専担者を置く。君はどうだ?以降銀行に残るとして出るとしても面白いぞ。もちろんまだ考える時間がある」














テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢8

 母は父の100万とありったけの父の財布から5万を持って新潟に出かけて行った。夫婦とは厄介なものだと思う。銀行の年末の仕事を終えると恒例の打ち上げがある。今夜は内勤の女性も残っている。静江が自然に私の横に座る。
「今年はよい年だった」
と支店長が長い話をする。12月は初めてグループ表彰で1位となった。私も大きな融資を3件こなし個人総合で全店で29位だ。だが打ち上げを済ませると我勝ちに帰っていく。そう言うのが銀行と言う職場だ。私が出てくると静江が付いてくる。
「マンションまで一緒させてください」
「帰りはタクシーに乗るんだよ」
 すでに何度もかえでのいる時に静江を抱いている。だから静江は昼のグリルも強要しない。マンションまではあまりにも短い道のりだ。
「お帰り!静江が下まで一緒だったのね?」
 どうも窓から見ていたようだ。ともこも帰っていて鍋の用意をしている。
「店で買った刺身を分けてもらった」
「まずビールで乾杯ね?私の最後の大みそかになったわ」
 除夜の鐘を聞いてまだ酒を飲んでいる。
「もう寝ないと疲れるよ」
と言うのにかえでは蒲団を敷いてともこを裸にする。どうも話が出来上がっていたようだ。それから私の服も脱がせる。
「これは静江には内緒だよ」
 私のものがともこの潤んだところに入っていく。血を分けた姉弟だと言うのがこんな気持ちなのか。
「ピルを飲んでいるからね。これが最後よ」
「私がかえでに頼んだ」
 ともこが耳元で言う。



 



テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ

明日の夢7

 平さんから集金の依頼があり3時に原付で駆けつけた。女将が私を2階に上げた。
「今日は頼母子の日じゃないですね?」
「ああ、そうだ。尋ねたいことがあってな?」
 最近の平さんの目は銀行時代と違って鋭い目になっている。
「お父さんが今度頼母子を落としたいと言ってきたんだが?」
「まだ積立して浅いから利子が高くなるのじゃあ?」
「100万だが今のお父さんでは重たい返済になるよ。何かあった?」
「いえ、母が帰ってきたのです。どうせその金は焦げ付くのです。妹の出産で送るのですよ」
「ともこさんは貸してあげてくださいと。保証人になると」
「ともこが?」
 彼女は母に遠慮している。
「ともこさんの話は聞いている?」
「ええ、桔梗で働くと」
「弟としてはどうなんだ?」
「複雑ですが姉さんが選択したのなら仕方がないと」
「今も桔梗に行ってかえでさんも入れて話し合っているよ」
 1階に降りるとかえでとともこがコーヒーを飲んでいる。
「あれ、集金?」
「そうだ。かえでは歩き回って大丈夫か?」
「私も一人くらいこなして帰ろうかと」
と笑う。
 父が自転車を止めて鞄を肩から下げて入ってきた。







テーマ : ファンタジー小説 -- ジャンル : 小説・文学

ページトップへ
プロフィール

yumebito86869

Author:yumebito86869
もう記憶の中で小さくなってしまているが、
小さい頃病院で隔離されていた時期があった。
その時隣部屋にかえでと言う毛糸の帽子を被った少女がいた。
童貞を失ったのもかえでだ。
何もかもう失った時、私はすみれとして彼女と再会した。
また短い時間だったが私の中で一生光り輝いている。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR