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思い出作り5

 最近は静江との昼ごはんは控えている。だが今日は強引にグリルに呼び出された。彼女は薄化粧をするようになっている。それで妙に大人っぽくなっている。営業の男性が告白して断られたという。
「最近このブログのファンになってるんです」
 彼女がコーピーしたブログを見てドキリとした。何とかえでのブログだ。最近はかえでとすみれのブログとなっている。私のブログをここに引越しさせたのだ。だからプロフィールの写真は二人の黒のTバックで抱き合っている写真をかえでが貼った。
「エロいのを見てるんだね?」
「エロくなんかないわよ。二人とも大好き!」
「どちらが好き?」
「どちらも好きだけど、私はすみれさんが大好き」
 何だかうれしい気がした。
「それとこのかえでさん私が通帳を作った人じゃないかと思っているの」
「まさか!」
 夜銀行に戻ると串カツ屋の会長の紹介の酒屋の建て替えの融資を書いている。これは本来地域的は代理の仕事がだ私に譲っている。銀行では融資は代理がほとんど扱うようだがこの代理はずっと預金畑だ。今度は繋ぎ資金ではなく長期資金だ。それに店と倉庫の他は賃貸物件になっている。
「10年じゃなくて7年で済まんか?」
 古い人は10年を嫌う。だが返済余力を見るとどうしても10年だ。支店長はそれでも判を押して帰る。私は8時には店を出る。最近はかえでは9時まで起きていれる。たくさん話をしておきたいのだ。






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思い出作り4

「親父いいか?」
 頼母子の集金に寄った時炊事場の父に声をかけた。父は最近は店のおかずも作るようになっているようだ。家を出てスーパーに寄ってから店に出る。だからその食材でかえでの食事を作っている。
「これかえでからだ」
 封筒に50万を入れている。
「これは?」
「中国に奥さんと娘がいるようだな?」
「・・・」
「これで会いに行けって。母は知っている?」
「いいや。かえでさんに初めて話した」
「どうして?」
「彼女を見ているとなんでも話したくなる」
「受け取ってくれ?かえでのしたいことは何でもさせたいんだ」
「分かっている。でももう少し元気になってからにしたい」
 今日は8時には銀行を出た。酒屋によって缶ビールを半ダース買ってマンションに戻る。
「お帰り!」
 珍しくかえでが起きている。
「お父さんに渡した?」
「ああ、だけど元気になってから行くと言ってたよ」
「だったらどうしても元気にならなくっちゃ!」
 缶ビールを開けてコップに入れる。おかんの店に行かなくなって1月にはなる。かえでが起き上がってコップを差し出す。
「今日は飲みたい気分よ」
「いいのか?」
「うんー、美味しい!」
「美味しいっていいことだな」
「そう、すみれのあの小説本になるようだよ。返事が来た」











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思い出作り3

 私はあの融資で今年の新人賞をもらうことになった。それで今日は本店の会議室に朝から呼ばれた。支店長が自慢そうに付き添う。融資の判を押したがらなかったのに、まるで自分が賞を採ったように役員に挨拶しまくっている。この人はこうして年を取っていくのだろう。
「コーヒーでも飲まないか?」
 今賞を手渡してくれた常務が肩を叩く。
「君は銀行員になりたくて?」
 大きなテーブルの椅子に常務は腰かけて聞く。
「私は小さい頃病院に入っていました。母からは見放されたままようやく浪人して私大を出て、ひっそり生きようとして生まれた大阪の街に戻ってきました。何の夢もなく希望もなく・・・」
 常務は黙ってコーヒーを飲んでいる。
「それがここで失っていたものを取り返したのです。今はそれで精一杯です」
「そうか。その決着がついたらまた話そう。平さんはあの彼女と出会ってから全く変わったのだ。それまではただのやる気のない男だった。だが彼女に店を持たせたいと頑張った」
 そうだ。私も時間のないかえでのために変わらないといけない。本店を出るとわざわざ環状線に乗った。左側の窓に子供のように顔をくっつける。窓の向こうに病院の非常階段が見える。小さな女の子が手を振っている。
 かえでは最後の大切な時間で私に会いに来てくれたのだ。私はかえでの最後まで精一杯彼女ために生きよう。そう思うと駆け足て戻りたくなった。
 部屋に入るとパソコンを開いたままかえでは眠っていた。横に座るとかえでに凭れてパソコンを覗く。これは送信した後だ。送り先はかえでが本を出している出版社だ。すみれとかえでが出している童話の出版の話だ。これは聞いていた。OKの返事と合わせて私の古い小説が送られている。



 




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思い出作り2

 父が毎朝訪ねてくるようになった。8時に朝ごはんと昼ごはんと夕食まで拵えてマンションに来る。まるで娘に仕える母のようだ。父にはかえでのことは話した。
「会社の登記は済ませたけど次は?」
 窓際に布団を立て掛けてかえではもたれている。病院に行った日より元気にはなっている。父がかえでに登記を見せている。
「雑誌社の口座の変更を頼みます」
 この会社はかえでになっていて取締役に私が入っている。通帳も父が私の銀行で作ったようだ。口座には何と祖母の遺産も入れて5千万ほど入っている。
「あまりパソコンをしないように」
と私が銀行に出かける。父は10時半まで側で手伝いをしているようだ。
 夜は父は来ない。私が戻ってくる頃にはかえでは壁に凭れて寝ている。体力がなくなったのだ。私は戻ってくるとかえでの横に座って缶ビールを手に食事をとる。それからパソコンを開く。かえでが昼の間かなりの絵を描いている。ほとんど私の書いていた過去の小説の挿絵が出来上がっている。
「ひろし君」
「目を覚ました?」
「お父さんね、初めて昔の話したよ」
「昔?」
「お父さん、中国にいた話は聞いたことない?」
「聞いたことはないな」
「結婚するまで中国にいたそうよ。親の危篤で戻ってきて家を継がされたそうよ。中国に奥さんと娘がいたって。私が生きている間にお父さんを中国に行かせてあげて。お金は通帳から出して」
「ああ」
 答えた時にはもう眠っている。








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思い出作り1

 真夏が過ぎかえでが寝込んだ。ここ10日間桔梗にも出ていない。
「私がやるから銀行に行って」
 かえでの下着が鮮血で真っ赤だ。今まで何度かあったが今度は量が多い。下着を脱がしてお湯を染ませたタオルで丁寧に膣から流れた血を拭き取る。かえでは嫌がるがもう拭き取る力がない。人形のように寝ているしかない。
「今日病院に行く」
「嫌」
「ダメだ!」
 今までにない私の強さにかえでが驚いている。私は病院の予約を取ってタクシーを呼ぶ。
「これだけは約束して?」
「病院には行くんだぞ」
「もう入院は絶対しないから」
「分かった」
 病院に着いてすぐに診察室に通される。私は9時から1時まで待合室に座っている。1時には別の部屋に私だけ通される。
 昔秘密基地に入っていたあの医師が部長になっている。
「彼女も君もこことは縁が深いな。かえではすでにここでは余命なしとなっている」
「それで?」
「治療の方法がない。閉じ込めておいても可哀想だ」
「死を待つだけと言うのですね?」
「精々いい思い出を作ることだな」






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プロフィール

yumebito86869

Author:yumebito86869
もう記憶の中で小さくなってしまているが、
小さい頃病院で隔離されていた時期があった。
その時隣部屋にかえでと言う毛糸の帽子を被った少女がいた。
童貞を失ったのもかえでだ。
何もかもう失った時、私はすみれとして彼女と再会した。
また短い時間だったが私の中で一生光り輝いている。

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