明日の夢9

 元旦ともこは中国から来た時に持っていたトランクを持って出て行く。かえでは二人のセックスには加わらずいつのまにか寝ていた。朝も目が覚めたようだが布団に横になったままだ。それでも新しい住まいまで送って行けと私を追い出した。私はともこのトランクを引きづる。
「中国の家族と離れて寂しくない?」
「母が再婚してからは一人ぽっちだった。私は日本に来て幸せだよ。父も優しいし、弟は私を抱いてくれた」
 正月の商店街は寂しい。だが飛田の門をくぐるともう女の子の座っている店もある。桔梗の前を通るとやり手婆が大きな座布団を並べている。店の前を通り過ぎると石垣の階段を上がり細い路地に入っていく。2階建ての木造のアパートが並びその外付けの階段を上がる。
 古い扉に鍵を差し込むと4畳半の部屋はがらんとしている。年末に布団と炬燵を買ったばかりだ。
「風呂もトイレもないんだな?」
「風呂は毎日店で入れるよ。共同トイレだけどここは飛田の女性だけしか入ってないもの」
「桔梗はいつから出る?」
「今日の3時から。当分9時まで。かえでの名前貰ったよ」
「それもかえでと話していたんだな?」
「そう、店も幻のかえでを売りにしたいみたい。かえでは自分が生き続けるのがうれしいと言ってくれたわ」
 ともこは途中で買ったお茶を入れてくれる。
「ここで頑張ってお父さんと暮らしたいの」
「時々飲もうよ」
「うん、楽しみにしている」









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明日の夢7

 平さんから集金の依頼があり3時に原付で駆けつけた。女将が私を2階に上げた。
「今日は頼母子の日じゃないですね?」
「ああ、そうだ。尋ねたいことがあってな?」
 最近の平さんの目は銀行時代と違って鋭い目になっている。
「お父さんが今度頼母子を落としたいと言ってきたんだが?」
「まだ積立して浅いから利子が高くなるのじゃあ?」
「100万だが今のお父さんでは重たい返済になるよ。何かあった?」
「いえ、母が帰ってきたのです。どうせその金は焦げ付くのです。妹の出産で送るのですよ」
「ともこさんは貸してあげてくださいと。保証人になると」
「ともこが?」
 彼女は母に遠慮している。
「ともこさんの話は聞いている?」
「ええ、桔梗で働くと」
「弟としてはどうなんだ?」
「複雑ですが姉さんが選択したのなら仕方がないと」
「今も桔梗に行ってかえでさんも入れて話し合っているよ」
 1階に降りるとかえでとともこがコーヒーを飲んでいる。
「あれ、集金?」
「そうだ。かえでは歩き回って大丈夫か?」
「私も一人くらいこなして帰ろうかと」
と笑う。
 父が自転車を止めて鞄を肩から下げて入ってきた。







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明日の夢6

 あの日の映像と写真が完成して送られてきた。かえではすでにブログですみれと撮影をしたと報告している。そのさわりの部分を今朝アップした。そこでモニュメントを発売すると宣言した。
「発禁になるのじゃ?」
「もちろん映像は修正をするわ。恥かしい?」
「いや」
「すでに彼らに同時に作ってもらっているのよ。私が死んでも生き続けるよ。今日は遅くなる?」
「夜に父を交えて母と話をする」
 これは困った顔で父が伝えてきたのだ。妹に子供ができたので金を作れと言うことだ。
「会社から金を出してもいいのよ」
「いや、妹に出すならどぶに捨てる」
 8時に銀行を出てマンションに行く。部屋の模様替えをしたのか依然の雰囲気がなくなっている。母の横に座っている父は別人のようだ。こういう結婚もあるのだ。
「いくら出す?」
 頭から出す話だ。
「ひろしも生活は厳しいのだよ。ここもひろしのマンションなんだ」
「だったらどこに住んでいるの?」
「友達のところに居候している」
「店は倒産するし子供ができるし大変なのよ。兄として応援する気はないの?」
 もう我慢の限界に来ている。急に立ち上がると、
「妹の応援はしない」
と部屋を飛び出した。
 戻るとかえでがビールを用意していて黙って勧めてくれる。







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明日の夢5

 私はかえでのアップされていない未公開作品を根気よくブログに載せている。かえでの4作目が発刊された。これは病院を退院して飛田の桔梗に出始めた日からの物語の漫画だ。この作品はかえでが元の作品に手を入れて書き変えた。最後にかえでが自殺することになるのだが、すみれとの再会に書き変えられた。
 今日は久しぶりにともこも入れておかんの店で飲むことになった。ともこが来てかえではしっかりと食べるようになった。それで少し元気になったように思う。
「こちらは?」
とおかんが久ぶりに顔を出したかえでに聞く。
「ひろし君の双子のお姉さん」
「あのすみれさん?そう言えば似ているわね」
「かえでは好き放題だからな」
 私は笑って二人にビールを注ぐ。
「私ね、桔梗に来年から出ようかと思っているのどう思う?」
「住まいのことなら心配しないでね?」
 かえではすでに相談を受けているらしくそれ以上は言わない。今は3人が川の字に寝ている。気を使っているのか夜は12時を過ぎて戻ってくることもある。
「もちろん言えた立場じゃないけどな」
「それより応援しないとね?」
「応援?」
「姉さんを抱くの怖い?」
「怖くない」
「なら部屋を出て行く日までに私が段取りする」












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明日の夢4

 あの日からかえでが寝込んだ。朝には必ずともこが食事の用意に来てくれる。疲れが出たようだ。だが私もかえでも覚悟の上だ。だが今日はともこが大きなトランクを持って現れた。
「姉さんどうした?」
「お母さんが来られたのです」
「中国から?」
「いえ、お父さんのお母さんが。どうも女を連れ込んだように思われて」
「困った人だ」
「しばらく姉さんを泊めてあげて?」
 かえでに言われて奇妙な3人暮らしが始まった。銀行に出て昼には父が働いている店に顔を出す。
「どうしたのですか?」
 姉と炊事場にいる父に声をかけた。
「お好み屋は倒産したしたそうだ。妹はそれでお母さんを追い出した」
「財産は?」
「すべて投げ出して旅費も身の回りのものを売って作ったようだ。相変わらず妹の悪口は言わず兄が保証人にならなかったことを恨んでいる」
「どうするんですか?」
「ともこが心配で?」
「しばらくは私のところに泊めます。それよりお父さんは?」
「女房だからな」








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プロフィール

yumebito86869

Author:yumebito86869
もう記憶の中で小さくなってしまているが、
小さい頃病院で隔離されていた時期があった。
その時隣部屋にかえでと言う毛糸の帽子を被った少女がいた。
童貞を失ったのもかえでだ。
何もかもう失った時、私はすみれとして彼女と再会した。
また短い時間だったが私の中で一生光り輝いている。

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